Chenille et pommes〜いも虫とりんご畑〜
POMMEのうた
by KITORI
あるりんご畑にいも虫が住んでいました
いも虫は毎日もぞもぞと少しずつ動いては葉を食べて
疲れると木陰で眠りました
りんご畑には小さな女の子がいました
女の子はりんごの木の間 走り回って遊びました
ときどきいも虫と目が会いましたが 驚いたりしませんでした
夜になるとりんご畑には静寂が降りて
赤いりんごたちは小さな声で歌います
すると星たちが少しだけ答えるの
いも虫はその時間が好きでした
女の子はいつの間にか年頃の娘になり
りんごの木の下に秘密を埋めました
淡い思いを込めて 甘いりんごをかじりました
いも虫はしなる枝をどこまでも行きました
季節の移り変わりや時の流れをほんの少し感じながら
小さな体でもぞもぞとただそれだけです
やがて美しい大人になった女の子を王子様が迎えにきました
空飛ぶ船でお城へ向かうの
その時もまたいも虫はただ りんごの葉をシャリシャリ齧っていました
ベールをつけた女の子 枝を少し持ち上げて
泣き顔でいも虫に微笑みました
もしかしたらいも虫も
もしかしたら微笑みました
あるりんご畑にいも虫が住んでいました
ゆっくりゆっくりと変わらぬ時間の中を歩くいも虫が
毎日毎日 もぞもぞと動いては 葉を食べて少しだけ前に進む
でもいも虫はわかってます いつか いも虫もまた何かになることを
時が来て役目を終えたら 素晴らしい羽が生えて来ることを
このりんご畑で